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「イマドキの若いもん」は1タイプじゃない?~NRI生活者1万人アンケートを活用したZ世代クラスタリング~

こんにちは。NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部の松下東子です。

本記事ではNRI独自の調査アンケートである「生活者1万人アンケート」を活用した価値観クラスタリングの事例第2弾をご紹介します。今回は、皆様の職場に加わってくる若手社員がどのような価値観・就労観を持っているのか、昔の若者と比べて今の若者(Z世代)はどう違うのか、分析手法と時系列推移の観点も含めた結果を説明していきます。皆様が日頃感じている傾向はデータでも検証できるでしょうか?ぜひ最後までご一読ください!

 

「NRI生活者1万人アンケート」の概要

「NRI生活者1万人アンケート調査」(以下、1万人アンケート)とは、1997年から3年に1度、全国15歳~79歳の男女計1万人を対象に、訪問留置法で生活像や生活価値観、消費実態を尋ねるNRI独自の取り組みであり、昨年2021年で第9回目を実施しています。

単純な消費実態などの行動に関するアンケート項目だけではなく、回答者の価値観に関する設問も多く含まれているため、時代とともにどのように国民の価値観が遷移しているのかなどをマクロ的に把握し、NRIとして対外に発信しています。

https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2021/cc/1119_1

調査項目については時代とともに入れ替えていますが、価値観などの基本項目は長期時系列で分析できるものもあります。今回はこの1万人アンケート結果を2003年調査から活用し、若手社員にはどういうタイプがいて、その構成比はどのように時系列で変わってきたのか、データから分析していきます。

 

Z世代の価値観・就労観別のクラスタリング

「昼休みに事務所で寝ていたり、電話に出ないことを注意したら『休憩時間なので』と言われた」

「会社の飲み会で『残業代出してもらえますか?』と言われた」

「権利主張がはっきりとしていて、残業代に対して分単位で請求を出してくる」

これらは、仕事をする上で、Z世代に対して「世代による常識の違いを感じたエピソード」として挙げられた意見の数例です。

「イマドキの若いもんは…」というのは、さかのぼれば古代ギリシャの哲学者プラトンの著書にも見られています。皆様方も、「シラケ世代」「新人類」「団塊ジュニア」「ゆとり世代」などとラベリングされ、「イマドキの若いもん」扱いされた経験があるのではないでしょうか。

しかし、SNSとともに生まれ育ち、デジタルネイティブとも呼ばれるZ世代は、これまでの「若いもん」以上に、上の世代との価値観ギャップがあるという指摘もあります。例えば、NRIの調査結果からは、以下のようなことが特徴として見られます:

■Webという集合知の活用に慣れた彼らは効率性・生産性を重視する(タイパ)
■仲間志向。また、SNSで培われたオープンかつフラットなコミュニケーションを好む
■低成長時代に育ち、将来に対する希望が少ない。そのため昔ほど頑張らず、ほどほどを志向
■会社への帰属意識は弱く、プライベート重視
■社会貢献・多様性(ダイバーシティ)・環境保護などについて意識が高い
■趣味や「推し」などの好きなモノ・コトには一直線

など

こうして見ると、同じZ世代でもさまざまなタイプがいそうです。また、「それって今の若者(Z世代)だけでなく、若い人って昔からそんな感じなのでは」というような特徴も見られます。

そこで今回は1万人アンケートを用いて、若手社員のクラスターを作成し、クラスター構成比の時系列推移、また、それぞれのクラスターに所属する「若いもん」の特徴・行動の違いを分析しました。

 

検討の手順

今回は以下の手順で分析から結果の把握を行いました。

分析-1 : クラスタリング入力情報の整理

  • 20代以下・未婚就労者の1万人アンケート回答項目の中から価値観に関する回答項目を整理する

分析-2 : 価値観・生きがい得点によるクラスターの作成

  • 1万人アンケートにおける生活価値観・就労価値観・生きがい得点に関する回答項目を活用してクラスターを作成する

結果-1 : 各クラスターの構成比の推移

  • 各クラスターの構成比推移を、2003年調査から2021年調査までで比較する

結果-2 : 各クラスターの行動特性

  • 生活価値観や就労価値観、消費・サービス利用実態に関する回答項目を活用して、各クラスターに所属する人の特徴や行動特性を把握する

 

分析-1 : クラスタリング入力情報の整理

まずはクラスターを作成するための入力情報を作成します。

1万人アンケートにはさまざまな価値観項目や、行動特性、属性、生活満足度や不安、生きがい項目などが調査項目としてあります。

例えば日常生活に関する価値観の調査項目としては、4段階尺度法にて以下のような設問が複数項目あるような形になります。

たくさんの調査項目がありますが、どのような「軸」を使ってクラスタリングをするかは、目的に応じて仮説を立てて、選んでいかなければなりません。今回は、「若手社員のタイプ分けをし、今と昔で比較する」という目的がありますから、生活価値観、就労価値観、生きがい配分(10割入力法)を用いてクラスタリングしてみましょう。

もちろんこの軸も一発で決めたものではなく、事前に「こんなタイプがいて、構成比は時系列でこんな風に推移しているのではないか」という仮説を立てて、分析-2のクラスター作成と行きつ戻りつしながら、トライ&エラーで選んでいきました。

さて、複数の設問項目をそのままクラスターの入力として利用することも可能ですが、類似した項目が多いと、クラスターごとの特徴を見るときに、結果の解釈が困難になります。そのため、まずは「次元削減」から実施しました。表形式のデータがあった場合に、表の縦方向、つまり消費者をいくつかのグループにまとめるのが「クラスタリング」、表の横方向、つまり回答結果や属性に関するデータ項目をまとめるのが「次元削減」となります。

今回は「次元削減」として、それぞれの価値観に関する複数のアンケート項目を主成分分析により要約し、設問の背後にある回答者のグループをクラスタリングの入力値として利用することにしました。

主成分分析とはマーケティングリサーチにて広く利用される手法で、類似した傾向を示す複数の項目を、より少ない変数に要約して解釈を容易にする手法です。似たものに因子分析があり、どちらも類似の項目をまとめていく手法ですが、「因子分析」が背後にある共通因子を見つけて理解するために行うのに対し、「主成分分析」は共通の主成分に情報を圧縮して、いわば「総合指標」を作るために行う、という考え方の違いがあります。

今回ここで行いたいことは次元の削減であるため、情報を圧縮するための「主成分分析」を用いました。また、クラスタリングの「軸」として扱いたいため、主成分同士が直交する(無相関)バリマックス回転をかけました。これを、主成分分析を直交解で行う、という言い方をします。

 

1つ目は「日常生活における価値観」の主成分分析結果です。今回はクラスターごとの構成比について過去調査からの時系列推移も確認したいため、どの調査回でも同じ軸でクラスター作成する必要があります。そのため、共通した調査項目が多い、2003年、2006年、2012年、2015年、2018年、2021年の6調査年のデータを縦積みでマージした時系列データセットで分析を行いました。

「日常生活における価値観」の主成分分析結果

 

最終的に以下の5成分を抽出しました

- 第1主成分:自己主張・挑戦

- 第2主成分:伝統的家族観

- 第3主成分:安定・協調志向

- 第4主成分:社会貢献・愛国心

- 第5主成分:仲間志向

それぞれの主成分の中で高い主成分負荷量*1を持つ調査項目を確認することによりその主成分の特徴が見えてくるため、その内容をもとに上記主成分の名前をつけています。

トライ&エラーの結果、クラスタリングの軸として切れ味が良かった第2主成分を除く4つの主成分を、クラスターの入力値としました。

「日常生活における価値観」のクラスターの入力値

 

「仕事における価値観」については、以下の3つの主成分が抽出されました。これもトライ&エラーの結果、第1主成分(成長・承認志向)、第2主成分(プライベート重視)を軸として採用しました。

「仕事における価値観」の主成分分析結果

 

さらに、1万人アンケートでは「生きがい配分」という聴取項目があります。日常生活において、生きがいを感じたり、大切にしている「場」として、「家族」「地域での交流や活動」「仕事」「趣味、友人との交流などの余暇活動」の4つに、合計が10割となるように、0~10までの数字を配分して答えるものです。

こちらはカテゴリー変数ではなくスケール変数であること、また、「場」の数も4つと少ないことから、次元削減は行わず、このまま入力値としました。

今回の分析においては主成分分析を適用した価値観項目に関してはそれぞれの主成分に対する主成分得点*2をユーザーごとに算出し、最終的にクラスターの入力値としています。最終的に価値観の項目として利用した指標は以下の内容になります。

クラスターの入力値一覧

 

 分析-2 : 価値観・生きがい得点によるクラスターの作成

ここまでの段階で入力情報の準備ができたので、実際にクラスタリングを実行していきましょう!

今回はクラスタリングの手法としてIBM社のSPSSの中にある「Two Stepクラスター分析」を利用しました。

Two Stepクラスター分析は、大量のケースをクラスタ化するためのもので、類似度の基準に基づいて観測値をグループ分けします。Two Stepクラスタ化方法では、最初のステップでクラスタ中心を発見するためにデータを流し 、2番目のステップでは階層クラスタ化方法を使用して、サブクラスタをより大きなクラスタに結合させていく、という2ステップを取ります。潜在クラス分析と同様に、連続変数だけではなく、カテゴリカル変数も含めて解析することができ、さらにAICやBICの情報量*3が最小となる最適なクラスタ数を自動的に推定するという利点があります。
(参考:smart-analytics.jp/spss/analysis/two-step/)

Two Stepクラスター分析の結果から、「20代以下・未婚就労者」は以下の4つのクラスター(グループ)に分かれることがわかりました。レーダーチャートは、クラスタリングに用いた10個の変数の特徴を表しています。理解のために4象限で示していますが、X軸・Y軸は解釈に基づいて仮に名付けたものです。

「20代以下・未婚就労者」のクラスターの特徴

 

結果-1 : 各クラスターの構成比の推移

以上の段階でクラスタリングが完了したので、まずは時系列で構成比を比較してみます。

「20代以下・未婚就労者」のクラスターの構成比

4つのクラスターの構成比は、2003年から直近2021年にかけて、大きく変化しています。特に変化が大きいのが、「趣味・自分重視グループ」で、2003年の20%から2018年、2021年には35%へと、15ptsも増加しています。このグループは、成長・承認志向得点、自己主張・挑戦得点、社会貢献・愛国心得点が顕著に低く、プライベート重視得点、仲間志向得点と安定・協調志向得点が高いのが特徴的です。また、生きがい配分は「趣味、友人との交流などの余暇活動」に平均5.42点(10点満点)と半分以上を振っています。Z世代は昔の若者に比べてプライベートを重視し仲間主義、安定・協調志向が強く、必要最低限しか頑張らないなどということが指摘されていますが、実際に「趣味・自分重視グループ」の構成比がこれだけ増えていれば、納得もできます。

もう一つ変化が大きいのが「仕事重視グループ」です。このグループは自己主張・挑戦得点と成長・承認志向得点が高く、プライべート重視得点が低いなど、仕事に自己実現を求めます。生きがい配分は「仕事」に平均で4.75点と半分近くを振っています。「仕事重視グループ」は、2003年の24%から2021年には14%まで、10pts減りました。逆に、言い換えれば自分の能力で成果を挙げ、会社を発展させ、出世したい、というグループは大きく減ってはいるのですが、それでも14%は今の若者、Z世代でも確かに存在するのです。

その他、社会貢献意識が強く、成長・承認志向得点や自己主張・挑戦得点など、前向き・外向きの傾向が強い「交流重視グループ」は直近で大きく減り、逆に仕事はそこそこ、プライベートや家庭生活を充実させたいワークライフバランスグループは直近で大きく増えています。これは、ソーシャルディスタンスのために社会的交流が自粛されたことや、テレワークなどの柔軟な働き方が増え、おうち時間が充実するといったコロナ禍の影響が大きいかもしれません。

 

結果-2 : 各クラスターの行動特性

次に、「イマドキの若いもん(≒Z世代)」のタイプ分けという目的に沿って、直近2021年のデータを用いて、デモグラフィック情報・価値観・消費行動特性の観点でそれぞれのクラスターの詳細を整理していきます。

各回答者の所属クラスター別に1万人アンケートの聴取項目とのクロス分析を行えば、それぞれのクラスターに属する人の特徴がわかります。

デモグラフィック属性には性別や居住地域で特徴が見られます。「仕事重視グループ」は政令指定都市に住んでいる割合が高く、特に東京や南関東に、親元を離れて単身で暮らしている割合が高いです。「ワークライフバランスグループ」は女性が6割を占め、パート・アルバイトの割合が高く、個人年収はやや低めです。

各クラスターの男女比

各クラスターの居住地域(都市規模)

 

趣味・余暇活動にも特徴が見られます。例えば、「テレビ、パソコン、携帯などのゲーム」はいずれのグループでも最も従事率が高い余暇活動ですが、特に「趣味・自分重視グループ」でよく楽しまれています。また、「交流重視グループ」はインドア・アウトドアともに多くの活動で従事率が高く、特にスポーツ・フィットネスやドライブ、ランニング・ウォーキングなどのリアルレジャーを活発に行っています。

各クラスターの趣味・余暇活動(従事率の多い項目のみ抜粋)

 

利用SNS・検索サービス・ニュースアプリなども、グループのサイコグラフィック(心理的)特性がよく表れています。全体的な傾向は各グループとも類似していますが、例えば「仕事重視グループ」ではSmartnewsやLINE NEWSなどのニュースを効率よく知ることができるサービスが特徴的に高く、「交流重視グループ」では実名で交流することの多いFacebookの毎日利用率が特徴的に高くなっています。女性の多い「WLバランスグループ」ではInstagramの毎日利用率が高く、「趣味・自分重視グループ」ではTwitter(現:X)の毎日利用率が顕著に高くなっています。

各クラスターのインターネットサービス利用割合(毎日利用している割合)

 

それぞれの項目別に、クラスター別の特徴を一覧として整理すると以下になります。

クラスター特徴のまとめ一覧

 

この結果をもとに、クラスター別にプロファイルしてみると、以下のような感じになるでしょうか。クラスタの名前は、こうしたクロス分析結果に基づいてつけています。

クラスタリング結果のまとめ

 

まとめ

以上、1万人アンケート結果を踏まえたクラスタリングの第2弾として、Z世代と呼ばれる若者の価値観クラスタリング分析と時系列比較を行い、プロファイリングを実施しました。

一口にZ世代といっても、まったく異なるタイプの価値観や行動特性を持ったグループが存在し、さらにその構成比が大きく変化していることが確認できました。また、様々な項目とのクロス分析によるプロファイリングによって、グループごとの詳細な人物像のイメージを把握することができました。

価値観クラスタリングは顧客対象のセグメント特性を把握することができ、マーケティング戦略の立案に活用することができます。また、潜在的な意識や価値観に基づいたプロファイリングを行うことで、従業員のマネジメントやモチベーションアップの方法を検討するためにも活用できます。さらに、今回見た時系列構成比の推移のように、「最近こんなタイプの人が増えているような気がする」というような感覚を、データとして可視化することもできます。検証したい仮説のある方は、本レポートを参考に、ぜひ取り組んでみてください。

 

*1:主成分負荷量とは主成分に測定変数が影響を与えている程度を表す値のことであり、-1 ~ 1の値の範囲をとります。値が-1に近いほど測定変数と負の関連がある主成分、1に近いほど測定変数と正の関連がある主成分となります。

*2:主成分得点とはそれぞれのユーザーが各主成分に対してどの程度重みを持っているのかを算出した値になります。値が大きいほど特定のユーザーはその主成分との関係が強い傾向にあると理解できます。

*3:AIC: 赤池情報量基準 BIC: ベイズ情報量基準